網膜静脈閉塞症(BRVO・CRVO)

網膜静脈閉塞症(BRVO・CRVO)

網膜静脈閉塞症(BRVO・CRVO)

網膜の血管が詰まり、眼底出血やむくみを引き起こす病気です。 「目の脳梗塞」とも呼ばれるこの病気は、40歳以上の約50人に1人が発症するとされており、決して珍しいものではありません

1. 血管が詰まる場所による違い

静脈がどこで詰まるかによって、呼び名と出血の広がり方が変わります。

  • 網膜静脈分枝閉塞症(BRVO): 網膜内の静脈の「枝」が詰まるタイプです。出血は網膜の一部(扇状)に限定されます。
  • 網膜中心静脈閉塞症(CRVO): 網膜の静脈の本幹(網膜中心静脈)が詰まるタイプです。根元が詰まるため、網膜全体に激しい出血が広がります。
最大のリスク因子は「高血圧」

網膜静脈閉塞症の発症には、高血圧が極めて重要なリスク因子として関わっていることが多くの調査データで示されています。ある調査報告によると、BRVO患者の約64%、CRVO患者の約48%に高血圧の合併が認められています(Ophthalmology 2010)。

適切な血圧コントロールは、発症を未然に防ぐためだけでなく、発症してしまった後の再発や悪化を抑えるためにも重要です。

2. 網膜静脈閉塞症の症状:ある日、突然起こる異変

この病気の最大の特徴は、「ある日突然、片方の目の見え方がおかしくなる」ことです。痛みはありませんが、詰まった場所や範囲によって、以下のような自覚症状が現れます。

  • 急な視力低下と「ゆがみ」(変視症) 血管が詰まって水分が漏れ出し、網膜の中心部(黄斑)に水が溜まる「黄斑浮腫」が原因です。視力が急激に落ちたり、直線が波打って見えたりします。
  • 視野の一部が暗い・欠ける(視野欠損) BRVO(分枝閉塞症)の場合、血管が詰まった領域(網膜の上半分、あるいは下半分)に一致して、視野の一部が見えにくくなります。
  • 全く症状がないケースも 出血やむくみが網膜の中心部から離れている場合、反対側の目がカバーしてしまうため、自覚症状が全くないことがあります。この場合、健康診断などの眼底検査で偶然発見されるケースが少なくありません。

3. 治療の進め方:視力を守り、合併症を防ぐ

【急性期】視機能を守る「抗VEGF療法」

発症直後の急性期は、視力低下の直接の原因である「黄斑浮腫(むくみ)」の解消を優先します。

目的と継続性: 浮腫を速やかに軽減させ、網膜細胞へのダメージを最小限に抑えることで視機能を保護します。一度の注射で完治することは少なく、複数回の継続的な投与が必要になるのが一般的です。

治療: 血管からの水分漏出を抑える薬(抗VEGF薬)を眼内に注射します。

【慢性期】将来の合併症を防ぐ「レーザー治療」

浮腫が落ち着いた後も、血流が途絶えた「虚血領域」がある場合は、将来の悪化を防ぐ対策が必要です。

  • リスクの評価: 大規模な臨床研究(BVOS)では、広い範囲で虚血がある症例の約40%に新生血管が生じ、そのうちの約60%(全体で約24%)が大きな眼内出血(硝子体出血)に至ることが報告されています(Arch Ophthalmol 1986)。
  • 予防的処置: 適切なタイミングでレーザー治療を行うことで、この硝子体出血の発症リスクを大幅に抑えられることが示されています(Arch Ophthalmol 1986)。

【合併症発生時】硝子体手術による対応

硝子体出血を発症すると、急激な視力低下を招きます

  • 出血が少量の場合:出血の自然吸収を待ちながら、慎重に経過を観察することもあります。
  • 出血量が多い、または原因が確定できない場合: 硝子体出血の背景には、網膜静脈閉塞症以外にも、網膜剥離(裂孔原性網膜剥離)など緊急の治療を要する重篤な病気が隠れている可能性があります。そのため、多くの場合は速やかに硝子体手術を行い、出血の除去と同時に原因を精査します。
医師からのメッセージ
芳賀 史憲

網膜静脈閉塞症(RVO)は、詰まる場所や程度によって病態はさまざまです。
当院では、精密検査に基づき、今すぐ注射が必要か、あるいは将来のためにレーザーが必要かを的確に判断します。「突然見にくくなった」と不安を感じたら、放置せず早めに受診してください。