中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)

中心性漿液性脈絡網膜症

中心性漿液性脈絡網膜症

働き盛りの男性で「なんとなくピントが合わない」「中心が少し暗い」といったわずかな違和感は中心性漿液性脈絡網膜症のせいかもしれません。
中心性漿液性脈絡網膜症は網膜の中心部(黄斑)において、網膜の下に水分が溜まり、部分的に剥がれてしまう病気です。
30〜40代の働き盛りの男性に多く見られますが、女性が発症することもあり、また高齢者の場合は加齢黄斑変性(AMD)との慎重な見極めが非常に重要です。

1. このような症状はありませんか?

視力を司る「黄斑部」に水が溜まるため、以下のような独特な見え方の変化が現れます。

  • 「中心暗点」:視界の中心が、丸くぼやけて見える
    • 症状: 見ようとする中心部が、まるで薄暗い影に覆われたように見えにくくなります。
  • 「変視症・小視症」:物がゆがんで見える、実物より小さく見える
    • 症状: 直線が曲がって見えたり、左右の目で見比べると片方だけ物が一回り小さく見えたりします。
  • 「色覚異常」:色の見え方が変わる
    • 症状: 全体的に黄色っぽく見えたり、色の鮮やかさが落ちて感じられたりします。

2. 原因とリスク要因

脈絡膜(網膜の奥にある血管の層)の血管から水分が漏れ出すことが直接の原因ですが、根本的な理由はまだ解明されていません。以下の要因が発症に関係しているとされています。

  • 自律神経の乱れ: ストレスや過労、睡眠不足などによって交感神経が過剰に興奮することが、脈絡膜の血流異常に関与していると言われています。
  • 特定の薬剤: ステロイド薬(内服、塗り薬、吸入、注射など)は、自律神経の働きや血管の状態に影響を与えるため、使用中の方は特に注意が必要です。
  • その他: 喫煙、妊娠、高血圧なども、血管や血流に負荷をかけるリスク因子とされています。

3. 診断と検査

中心性漿液性脈絡網膜症の診断では、表面の網膜だけでなく、その奥にある「脈絡膜」の状態を詳細に評価することが不可欠です。

  • OCT(光干渉断層計): 網膜の下に溜まった水分や、中心性漿液性脈絡網膜症の病態に深く関与する脈絡膜の厚み・形態を検査します。
  • 蛍光眼底造影(FA / ICGA): 2種類の造影剤を使用して、水漏れの箇所と原因を特定します。
    • FA(フルオレセイン造影): 脈絡膜から漏れ出た水分が、網膜側へと噴き出している「漏出点」を特定します。レーザー治療を行う際の重要な標的となります。
    • ICGA(インドシアニングリーン造影): 網膜のさらに奥にある「脈絡膜」自体の血管透過性亢進(血管から水分が染み出している状態)を確認します。中心性漿液性脈絡網膜症の本態である脈絡膜の血流異常を評価するために必須の検査です。

4. 治療について

中心性漿液性脈絡網膜症は、数ヶ月の経過観察で自然に治ることも多い病気です。そのため、まずは「ストレスの軽減・禁煙・経過観察」による自然治癒を待ちます。

経過観察の目安は約6ヶ月です。これ以上の期間、網膜の下に水分が溜まった状態が続くと、視細胞へのダメージが蓄積して視力の回復が難しくなるため、以下の治療を検討します。

どの治療を選択するかは、紹介先の造影検査結果で決定されます。

  • レーザー光凝固
    • 適応: 水漏れの点(漏出点)が、ものを見る中心部(中心窩)から十分に離れている場合に行います。
    • 仕組み: 漏出点を直接焼き固めて、水の流入を物理的に遮断します。
  • 光線力学療法(PDT)
    • 適応: 漏出点が広範囲である場合や、慢性化して通常のレーザーでは対応できない場合に有効です。
    • 仕組み: 特殊な薬剤を点滴した後に弱いレーザーを照射し、脈絡膜の血管からの漏れを抑えます。非常に有効な治療法ですが、現在は中心性漿液性脈絡網膜症に対しては保険適用外(自費診療)となります。
治療の補足:内服薬・点眼薬について

外来で「飲み薬や目薬で治りませんか?」というご質問をよくいただきます。しかし現時点では、中心性漿液性脈絡網膜症に対して視力を改善させたり、治癒を早めたりするという明確な根拠(エビデンス)が証明された薬剤はありません。

循環改善薬などが処方されることもありますが、あくまで補助的な位置づけです。当院(副院長)は、根拠のない長期の薬物療法で漫然と様子を見ることはいたしません。網膜へのダメージを最小限に抑えるためにも、「約6ヶ月」で自然軽快しない場合には、エビデンスに基づいた効果の認められるレーザー等の治療を検討するという方針を採っています。

5. 当院の診療体制と連携について

  1. スムーズな検査連携 副院長は、これまで数多くのレーザー光凝固や光線力学療法(PDT)に携わってきました。再発例や加齢黄斑変性との鑑別が難しい症例とも数多く向き合ってきた経験を活かし、紹介すべき適切なタイミングを見極めます。治療方針(どのレーザーを選択するか)や最適な治療時期については、造影検査の結果に基づき、紹介先の病院にて最終決定されます。当院で精密検査が必要と判断した際は、速やかに「眼科三宅病院」などの高度な検査設備を備えた施設へご紹介させていただきます。
  2. 安心のフォローアップ体制 中心性漿液性脈絡網膜症は治療後も再発したり、将来的に加齢黄斑変性(AMD)へと進展したりする可能性がある疾患です。視力を守るためには、治療後も定期的な経過観察が欠かせません。高次施設での治療が落ち着いた後は、再び当院にて責任を持って末長くサポートを継続いたします。
医師からのメッセージ
芳賀 史憲

中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)は自然に治ることも多い病気ですが、水が溜まった状態が長引いて網膜のダメージが蓄積してしまうと、たとえ後から水が引いても、視力の回復が難しくなることがあります。 適切なタイミングでの診断と治療が大切です。
「おかしいな」と感じたら、一人で悩まずにぜひ一度ご相談ください。